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看護師がメンタルで休むのは戦略的撤退!HSPや適応障害のケア法

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「師長の足音で胃が痛む」という悩みに対し、それは心が弱いせいではないと伝えるスライド。動悸、休日も泥のように眠る、涙が止まらないといった症状を挙げている。

毎日仕事に行くだけで精一杯で、ナースステーションに入る前に深呼吸しないと動悸がする。そんなギリギリの状態で「私ってメンタル弱いのかな?」「もう休むしかないのかな」と一人で悩んでいませんか?

実は私も病棟で働いていた頃、師長の足音が聞こえるだけで胃がキリキリと痛んで、トイレに駆け込んだ経験があります。看護師がメンタル不調を感じるのは、決してあなたが弱いからではありませんし、休むことに罪悪感を感じる必要も全くないんですよ。

この記事では、なぜ私たちがこんなに追い詰められてしまうのか、その理由と今日からできる心の守り方について、私の実体験を交えながらお話ししますね。

夕暮れの窓辺にあるデスクとパソコンのイラスト。「もう、ひとりで頑張らないで」というメッセージ

記事のポイント

  1. 看護師がメンタル不調になるのは個人の性格ではなく構造的な要因が大きいこと
  2. 現場で消耗しやすいHSP気質の特徴と適応障害のサインの見極め方
  3. 仕事中や帰宅後にすぐ実践できる心の負担を減らす具体的な応急処置
  4. 限界を迎える前にプロの手を借りる重要性と長く働くための自分軸の作り方
目次

その辛さは「性格」ではない。看護師がメンタル不調に陥る構造的要因

看護師のメンタル不調の原因を図解。バーンアウト、感情労働、自律神経の乱れ、決断疲れの4つの矢印が絡み合っているイラスト

「同期はみんな頑張ってるのに、私だけついていけない」なんて、自分を責めてしまっていませんか?でもね、それは大きな誤解なんです。ここでは、看護師という職業自体が抱えている、メンタルダウンしやすい構造的な原因について、私の経験も踏まえて解説します。これを知れば、「私のせいじゃなかったんだ」って少し肩の荷が下りるはずですよ。

責任感の強さが仇になる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」

看護師を目指す人って、基本的に真面目で責任感が強くて、本当に優しい人が多いですよね。「患者さんのためなら」って、自分の休憩時間を削って記録を書いたり、残業代が出なくても勉強会に参加したり…。私も新人の頃は、それが看護師としての「当たり前」だと思い込んでいました。

でも、その「献身」が過剰になりすぎると、ある日突然、プツンと糸が切れたように動けなくなってしまうことがあるんです。これが「バーンアウト(燃え尽き症候群)」です。

実はこれ、いきなり倒れるわけではありません。倒れる前には必ず、心と体からの「小さなSOS(予兆)」が出ているんです。でも、真面目な人ほど「まだ動けるから大丈夫」と無視してしまうんですよね。

危険信号!こんな「予兆」出ていませんか?

  • 大好きだったドラマや推しの動画を見るのが億劫になった
  • 休日は泥のように眠るだけで、気づいたら夜になっている
  • 友達からのLINEを返す気力が湧かず、未読スルーが増えた
  • 悲しい・嬉しいという「感情」が動かなくなり、無表情でいる時間が増えた

どうでしょうか?もし当てはまるなら、それはあなたが「怠け者」になったからではありません。全力疾走し続けた結果、心が「ガス欠」を起こしかけている緊急事態なんです。

私も病棟時代、完璧を目指しすぎて、ふとした瞬間に「あ、もう無理かも」ってナースステーションで涙が止まらなくなったことがあります。あの時の自分に言ってあげたいのは、「もっと頑張れ」じゃなくて、「もう十分頑張ったよ、休んでいいんだよ」という言葉でした。

ここがポイント

バーンアウトする人は、サボっている人ではなく、誰よりも一生懸命だった人です。「動けなくなる前にブレーキを踏む」ことは、逃げではなく、長く看護師を続けるための賢い戦略なんですよ。

感情労働による消耗「エモーショナル・ラボア」とは

私たちは日々、患者さんの不安や恐怖を受け止め、笑顔で励まし、時には理不尽なクレームにも冷静に対応しなければなりません。心の中では「いや、それは違うでしょ!」と叫んでいても、顔では「そうですね、辛いですよね」と微笑む。このように、自分の本当の感情をコントロールして、職務上求められる表情や態度を演じる労働を「感情労働(エモーショナル・ラボア)」と呼びます。

「プロなんだから笑顔でいなきゃ」と割り切っているつもりでも、家に帰ると泥のように疲れて動けなくなること、ありませんか? 実はこれ、単なる気疲れではなく、「脳や心に強い負荷がかかっている状態」として説明されることが多いんです。

専門用語で「認知的不協和」という言葉があります。これは「本心(怒りや悲しみ)」と「行動(笑顔)」が矛盾している時に生じる、強烈な不快感のことです。私たちの脳は、このズレを気持ち悪いと感じ、無理やり辻褄を合わせようとして、「本心と振る舞いのズレを埋める」ためにエネルギーを消耗しやすくなります。

脳は「演技」に弱い?

実は、脳にとって「本心と違う行動をとる」ことは、重い荷物を持つ肉体労働に近いくらい、強い疲労感につながることがあります。あなたがクタクタなのは、一日中脳内で「高度な情報処理」をし続けていたからなんですよ。

私も病棟時代、看取りの直後に別の部屋へ行き、明るく振る舞わなければならなかった時、トイレの鏡に映った自分の笑顔が能面のようで怖くなったことがあります。そして帰宅後、玄関で靴も脱がずに座り込んでしまい、夫に驚かれたことも一度や二度ではありません。

だから、もしあなたが理由もなくドッと疲れを感じているなら、それは心が弱いからではありません。一日中、重たい「心の仮面」を支え続け、脳がフル回転で戦っていた証拠なんです。感情のタンクが空っぽになるのは、あなたがそれだけプロとして頑張った結果なんですよ。

不規則勤務が自律神経を破壊するメカニズム

夜勤明けの朝の日差し、妙に目に刺さって辛く感じることってありませんか?人間には本来、朝起きて夜眠るというサーカディアンリズム(概日リズム)があります。でも、私たち看護師は2交替や3交替でそのリズムに逆らって生きていますよね。

不規則な睡眠や食事時間は、自律神経のバランスを崩す最大の要因です。交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の切り替えがうまくいかなくなると、休みたいのに目が冴えて眠れない、動かなきゃいけないのに鉛のように体がだるい、といった不調に直結します。

これは「気合」や「根性」でどうにかなる問題ではなく、「生理学的なダメージ」なんです。だからもし、あなたが心身の限界を感じているなら、「夜勤専従」や「日勤のみ」へのシフト変更を申し出ることは、甘えでもわがままでもなく、あなたが生き残るための「生理学的な生存戦略」なんですよ。

勇気を出して調整を!

自分の体を守れるのは自分だけです。「みんなやってるから」と無理をして壊れてしまっては元も子もありません。働き方を変えることは、あなたが長く看護師を続けるための、とても賢い選択だと私は思います。

「ミスが許されない」緊張状態が続く脳疲労

「点滴の量、合ってるかな?」「今のバイタル、ドクターに報告すべき?それとも様子見?」
看護師の仕事って、息つく暇もなく「確認」と「判断」の連続ですよね。命を預かる現場では、小さなミスも許されないというプレッシャーが常にのしかかっています。

実は、私たちの脳を蝕んでいるのは、このプレッシャー(過覚醒)だけではありません。もう一つ、見落とされがちな大きな原因が「決断疲れ(Decision Fatigue)」です。

心理学の研究によると、人間は「決断」をするたびに脳のエネルギー(ウィルパワー)を消費すると言われています。看護師は勤務中、瞬時の判断を数百回、数千回と繰り返していますよね。たとえ一つひとつは小さな判断でも、積み重なれば脳は夕方には完全にオーバーロード(過負荷)状態になってしまうんです。

ミスは「能力不足」じゃない

勤務の後半でヒヤリハットが増えるのは、あなたの注意力が足りないからでも、能力が低いからでもありません。ただ単に、脳の「決断するための燃料」が底をついただけなんです。それは生理現象であって、あなたの人間性とは何の関係もありません。

調査でも、看護職は慢性的な疲労を感じやすい職種だと報告されていますが、これだけの決断回数をこなしていれば当然の結果だと思います。

私も病棟時代、夜勤明けに簡単な計算ができなくなって愕然としたことがありました。でもそれは、脳がそれだけ必死に戦い抜いた証拠だったんですよね。だから、もしインシデントを起こして落ち込んでいたとしても、どうか「自分はダメな看護師だ」なんて責めないでください。あなたの脳は、もう十分すぎるほど頑張っているんですから。

あなたはHSPかも?「繊細さん」な看護師が現場で消耗する理由

「先輩の機嫌が悪いと、私のせいかな?と不安になる」「ナースコールが重なるとパニックになる」。もしそんな自覚があるなら、あなたはHSP(Highly Sensitive Person)という気質を持っているのかもしれません。ここでは、繊細な気質を持つ看護師が現場で感じやすい辛さについて深掘りします。

【セルフチェック】看護師HSPのよくある特徴リスト

HSPは病気ではなく生まれ持った「気質」ですが、医療現場という刺激の多い過酷な環境では、その敏感さが生きづらさにつながることがあります。でも、その特徴はすべて「看護師としての才能」と表裏一体なんですよ。以下のリストでチェックしながら、自分の才能も一緒に確認してみてくださいね。

HSP看護師あるあるチェック

  • 患者さんの痛みや苦しみを、まるで自分のことのように感じて辛くなる
    →【才能】患者さんの小さな変化や隠れたSOSに誰よりも早く気づける
  • 先輩が他の人を怒っているのに、自分が怒られているように萎縮してしまう
    →【才能】場の空気を読む力が高く、チームの不協和音を察知できる
  • ナースコール、モニター音、話し声など、職場の「音」にひどく疲れる
    →【才能】異常音(アラーム)への反応が早く、インシデントを未然に防げる
  • 一度に複数のことを頼まれると、頭が真っ白になってパニックになる
    →【才能】一つひとつの業務を丁寧かつ慎重に進める集中力がある
  • 些細なミスでも深く落ち込み、家に帰ってからもずっと引きずってしまう
    →【才能】同じミスを繰り返さないよう深く内省し、成長する力がある
HSP看護師の「辛さ」を「才能」にリフレーミングする対比表。「痛みに共感する」は「SOSに気づける才能」であるという解説

いくつ当てはまりましたか?もし多く当てはまるなら、あなたは「メンタルが弱い人」ではありません。人一倍感受性が豊かで、「看護師としての素晴らしいセンサー」を持っているということなんです。

患者の痛みを自分のことのように感じる「共感疲労」

HSP気質の看護師さんは、共感力が非常に高いのが特徴です。患者さんの心に深く寄り添えるのは、間違いなく素晴らしい才能なのですが、同時に諸刃の剣でもあります。

患者さんの悲しみや苦しみをダイレクトに受け取ってしまい、自分まで心が削られてしまう状態を「共感疲労」と言います。「仕事だから」と割り切れず、患者さんの人生を背負いすぎてしまうんですね。私も看取りが続いた時期は、家に帰ってからも涙が止まらず、夫に心配されたことがありました。優しすぎるがゆえの苦しみですよね。

ここで一つ、覚えておいてほしいことがあります。それは「シンパシー(同情)」と「エンパシー(共感・理解)」は違うということです。

穴に落ちた人と一緒に落ちてしまう「同情」と、穴の上から手を差し伸べる「共感」の違いを示したイラスト。

「巻き込まれる」のではなく「寄り添う」

シンパシーは「可哀想だ」と一緒に穴の底に落ちてしまうこと。一方、エンパシーは「辛いんだね」と理解しつつ、穴の上から手を差し伸べることです。プロとして患者さんを支えるためには、あえて「客観的な立ち位置」を守ることも、自分と患者さんの両方を守るための大切な技術なんですよ。

冷たくなるのではありません。「私はここからあなたを支えます」という適切な距離感を持つことが、結果として長く良い看護を提供することに繋がるんです。

ナースステーションの「不機嫌な空気」に感染する

ナースステーションって、時々すごく空気が重いこと、ありませんか?(苦笑)
誰かがイライラして足音を立てたり、カルテをバン!と置いたり。HSPさんは、そうした非言語的な情報(不機嫌な波動)を敏感に察知してしまいます。

「あの先輩、機嫌悪そう…」「私が何かしたかな?」と、常にアンテナを張り巡らせている状態なので、ただ座っているだけでHPが削られていく感覚、すごくよく分かります。これって本当にしんどいんですよね💦

そんな逃げ場のない空間で、私が実践していた唯一の防衛策が「イメージの力」を使うことです。HSPさんは感受性が強い分、イメージする力も人一倍強いはず。それを逆手に取るんです。

透明なアクリル板でガード!

自分と不機嫌な先輩の間に、分厚くて透明な「防弾アクリル板」があるイメージを持ってみてください。先輩のイライラや棘のある言葉は、そのアクリル板に当たって全部跳ね返されます。あなたは安全な板の向こう側から、ただ冷静に「おや、今日もアクリル板が大活躍ですね」と観察するだけでいいんです。

これ、騙されたと思ってやってみてください。物理的には同じ場所にいても、精神的に「結界」を張るだけで、心のダメージは驚くほど軽くなりますよ。

マルチタスクとアラーム音が引き起こすパニック

点滴交換に行こうとしたらナースコールが鳴り、同時に先輩から「これやっといて」と頼まれる…。病棟では日常茶飯事ですが、一度に複数のことを処理するのが苦手なHSPさんにとって、この「マルチタスク」は脳を焼き切るほどのストレス源です。

さらに、モニターのアラーム音やポンプの警告音など、病院は常に刺激的な音で溢れていますよね。聴覚過敏の傾向がある人にとっては、この音環境に身を置くだけで脳がパニック状態(フリーズ)になってしまいます。

もし、現場で「もうダメだ、頭が回らない!」とパニックになりそうになったら、私が実践していた「魔法の言葉」を心の中で唱えてみてください。

パニックを止める魔法の言葉

「まずは深呼吸、一つずつでいい。」

たったこれだけ?と思うかもしれませんが、思考停止した脳にこの短いフレーズを割り込ませることで、暴走しかけた思考を強制的にリセットできるんです。「全部やらなきゃ」ではなく「目の前の『一つ』だけでいい」と自分に許可を出してあげることで、不思議と冷静さを取り戻せますよ。

HSPは「優秀な看護師」の裏返しであるという肯定

ここまで読んで「私って看護師に向いてないのかな…」と落ち込んでしまったかもしれません。でも、ここで断言させてください。HSPの気質は、看護師として素晴らしい才能の裏返しなんです。

些細な変化に気づけるということは、患者さんの急変や小さなニーズをいち早く察知できるということ。共感力が高いということは、患者さんに深く寄り添えるということ。あなたは今のままで十分、素敵な看護師さんなんですよ。ただ、少しだけ「自分を守る術」が必要なだけなんです。自信を持ってくださいね✨

そしてもう一つ、「今の病棟」だけが看護師の職場ではありません。HSPさんの繊細な気質が、むしろ強みとして輝く場所はたくさんあります。

HSP看護師さんが輝ける職場の一例

  • 緩和ケア病棟: 高い共感力で患者さんの最期に寄り添える
  • 透析クリニック: ルーティン業務が多く、突発的な変化が少ないため落ち着いて働ける
  • 健診センター: 健康な人が対象で、生死に関わるプレッシャーが少ない
  • 訪問看護: 一対一でじっくり患者さんと向き合える(私の今の職場です!)

「ここしかない」と思い詰めないでくださいね。あなたのその優しさを必要としている場所は、必ずありますから。

「行きたくない」は心の骨折。適応障害と診断されるライン

人体のシルエットに、頭痛、不眠、腹痛などの身体化症状が現れているイラスト。「特定の状況下での不調は回復のサイン」というメッセージ

「これくらいで休んでいいのかな」「ただの甘えじゃないかな」。そう迷っている間に、心と体は限界を超えているかもしれません。ここでは、医療的な視点から「休むべきサイン」についてお話しします。

うつ病とは違う?「適応障害」の特定のストレッサー

メンタル不調と聞くと「うつ病」をイメージする人が多いですが、働く世代に多いのが「適応障害」です。うつ病との大きな違いは、「原因(ストレッサー)がはっきりしていること」です。

例えば、「職場に行くと具合が悪くなるけれど、休みの日に趣味のことをしている時は元気」という場合、「甘えだ」と誤解されがちですが、これは適応障害の典型的な特徴です。特定の環境(職場や特定の人間関係)に適応できず、心が悲鳴を上げている状態なんですね。

でも、これは逆に言えば「希望」でもあります。

「石」を取り除けば歩ける

うつ病が「出口の見えない長いトンネル」だとしたら、適応障害は「靴の中に入った石」のようなものです。石が入ったまま走り続ければ足は傷だらけになりますが、靴を脱いでその石を取り除けば(あるいは靴を履き替えれば)、またすぐに歩き出せるようになるんです。

だから、「休職」や「異動」を恐れないでください。それは逃げではなく、靴の中の石を取り除くための、最も確実で回復の早い治療法なんですよ。

職場に行こうとすると出る「身体化症状」のサイン

心からのSOSは、言葉になる前に「体」に出ます。以下のような症状が出ていたら、それはもう「気合」で乗り切れるレベルではありません。

出勤前の腹痛・吐き気

朝、制服に着替えようとするとお腹が痛くなる、駅のホームに立つと吐き気がする。これは体が全力で「そこに行ってはいけない!」と拒否反応を示している証拠です。私も経験がありますが、出勤前のトイレから出られなくなるのは、立派な病気のサインですよ。

涙が止まらない・眠れない

夜布団に入っても仕事のことが頭を離れず眠れない、あるいは朝起きられない。ふとした瞬間に涙が勝手に出てくる。これは自律神経の調整機能が壊れかけている状態です。感情のコントロールが効かなくなっているのは、心が骨折しているのと同じことなんです。

ここでお伝えしたいのは、「このサインを無視して出勤し続けた場合の最悪のシナリオ」です。

SOSを無視するとどうなる?

もし、この状態で無理に出勤を続けたら、どうなると思いますか?
通勤中に駅のホームで意識を失って倒れるかもしれません。あるいは、集中力が切れて車の運転中に事故を起こしてしまうかもしれません。
「休む勇気」が出ないなら、「休まないと取り返しのつかないことになる」という危機感を持ってください。大袈裟ではなく、あなたの命を守るための警告なんです。

「適応障害」は環境調整で治る病気である

適応障害の治療で最も大切なのは、薬よりも「環境調整」です。つまり、辛い原因となっているストレッサーから物理的に距離を置くことです。

「休職」や「異動」は逃げではなく、れっきとした治療のための処置です。骨折したらギプスをして安静にしますよね?それと同じで、心が折れたら、原因から離れて休むことが最優先の治療法なんです。医師の診断があれば、環境を変えるための強力な切符になります。

「でも、休んだら復帰する時気まずいし…」「キャリアに傷がつくんじゃ…」
そう思って躊躇する気持ち、痛いほど分かります。でも、これだけは言わせてください。

「キャリアはいくらでも修正できるけど、あなたの命と心の代わりはどこにもない」

インナーダイアログ(心の反論)への答え

「今休んだら終わりだ」と思っていませんか? 逆です。今休むからこそ、未来のあなたが笑って働ける日が来るんです。復帰後のことなんて、元気になってから考えれば十分間に合いますよ。

今すぐできる!看護師のための「秒で効く」メンタル応急処置

そうは言っても、今すぐには休めない…という現実もありますよね。ここでは、勤務中や帰宅後にサッとできる、私が実践して効果があった心の応急処置テクニックをご紹介します。

トイレ個室で実践!「1分間マインドフルネス」

忙しさでパニックになりそうな時、現場で唯一のサンクチュアリ(聖域)…それが「トイレの個室」です(笑)。駆け込んで鍵を閉めたら、そこはあなただけのプライベート空間。ここで行う「1分間マインドフルネス」で、強制的に脳をクールダウンさせましょう。

ポイントは、呼吸に集中するだけでなく、「感覚入力を物理的に遮断すること」です。

トイレ個室での緊急レスキュー手順

  1. 便座の蓋を下ろして座る(便座に座るより落ち着きます)
  2. 両手で耳を塞ぎ、目を閉じる(これで視覚と聴覚からの情報を9割カットできます)
  3. その状態で、自分の呼吸音だけに意識を集中して1分間過ごす

病院は常に「音」と「光」と「人の動き」で溢れかえっています。HSPさんの脳は、この情報の洪水に溺れかけている状態なんです。だからこそ、物理的に情報を遮断してあげることで、驚くほどスッと楽になりますよ。ぜひ試してみてください。

トイレの個室で耳と目を塞ぎ、深呼吸をする看護師のイラスト。視覚・聴覚情報を遮断して脳を休ませる手順図

昂った交感神経を鎮める「4-7-8呼吸法」

先輩に怒られて心臓がバクバクしている時、あるいは帰宅後も興奮して眠れない時におすすめなのが、「4-7-8呼吸法」です。これは、米国の統合医療の権威であるアンドルー・ワイル博士が提唱した、自律神経を整えるための強力な呼吸テクニックです。

【実践方法】

  1. 口から「ヒュー」と音を立てて、完全に息を吐き切る
  2. 口を閉じて、鼻から静かに4秒かけて息を吸う
  3. 息を7秒止める
  4. 口から「ヒュー」と音を立てて、8秒かけてゆっくり息を吐き出す

※これを4セット繰り返します。

なぜこの秒数なのか、気になりますよね? 実はこれには明確な生理学的な理由があります。

呼吸のテンポを整えることで、過覚醒になった体の反応を落ち着かせる助けになります。特に、「ゆっくり吐く」動きはリラックス反応を促しやすいと言われています。
※息止めが苦しい人は、無理のない秒数に短縮してください。

つまり、これは単なる深呼吸ではなく、暴走している交感神経にブレーキをかけるための「自律神経を落ち着かせるための呼吸テクニック」なんですよ。

辛い感情を客観視する「実況中継テクニック」

イライラや悲しみに飲み込まれそうな時は、自分を第三者の視点(天井のカメラから見ているような感覚)で実況中継してみましょう。

この時、ポイントになるのは「ユーモア」を少し混ぜることです。

心の中の実況例

「おっと、ここで〇〇先輩、今日も絶好調に噴火中です!マウナロア火山もびっくりのエネルギーですね〜」
「一方、私(ころんしゃん選手)は、胃がキリキリしております。どうやら今日のランチは消化の良いうどんに決定のようです」

ふざけているように見えるかもしれませんが、これは心理学で「メタ認知」「脱フュージョン」と呼ばれる立派なテクニックです。感情に飲み込まれず、あえて「面白おかしく」実況することで、辛い現実と自分の心の間に「笑い」というクッションを挟むことができるんですよ。

帰宅後にスイッチを切るための「儀式」を作る

家に仕事を持ち込まないためには、脳に「ここからはオフ!」と教え込む儀式が必要です。特に、視覚や行動だけでなく、五感(嗅覚・触覚)を使ったアプローチが効果的です。

制服から着替えた瞬間に「看護師」を脱ぐ

更衣室で私服に着替えたら、そこからはもう「看護師の自分」ではありません。ただの「〇〇さん(あなたの名前)」です。病院を出る自動ドアを通る瞬間に、背中の見えない荷物を下ろすイメージを持つのも良いですね。

さらに、帰宅後は「部屋着の触覚」にこだわってみてください。ふわふわのパジャマや肌触りの良いコットンのTシャツなど、制服とは正反対の素材に包まれることで、脳が「今は戦場じゃない」と認識しやすくなります。

愚痴ノートを書いて物理的に破り捨てる

どうしてもモヤモヤが消えない時は、ノートに思いっきり書き殴りましょう。「あの言い方ムカつく!」「私は悪くない!」など、汚い言葉でもOK。そして書き終わったら、そのページをビリビリに破いて捨てます。

この時、好きなアロマを焚いたり、ハンドクリームを塗ったりして「良い香り(嗅覚)」をプラスするとさらに効果的です。嫌な記憶(視覚・聴覚情報)を、心地よい香り(嗅覚情報)で上書き保存してしまうようなイメージですね。

自分の心を守るための「境界線(バウンダリー)」の引き方

人の周りに透明なバリアが張られ、先輩の不機嫌や理不尽な要求を跳ね返しているイメージイラスト

優しすぎるあなたは、他人と自分の境界線が曖昧になっているかもしれません。自分を守るための「バウンダリー(境界線)」の引き方を練習しましょう。

患者・家族と適切な心理的距離を保つ技術

患者さんの要求にすべて応えようとすると、あなたが潰れてしまいます。「ここまでは私ができること、ここからは患者さんが乗り越えること」と線引きをすることは、冷たさではなく、プロとしての姿勢です。感情的に巻き込まれそうになったら、物理的に一歩後ろに下がって距離を取るのも一つの手です。

ここで大切なのは、「手を出さないことは、患者さんの力を信じること(エンパワメント)」だという視点を持つことです。

「冷たさ」と「プロ意識」の違い

全てをやってあげるのは「過干渉」であり、患者さんの自立の芽を奪うことにもなりかねません。あえて距離を置き、患者さんが自分で乗り越えるのを見守ることは、信頼に基づいた「究極の優しさ」でもあるんですよ。だから、距離を取ることに罪悪感を感じる必要は全くありません。

「できません」「無理です」を伝えるアサーション

頼まれごとを断れない…という悩み、ありますよね。相手を尊重しつつ、自分の主張も伝える「アサーション」を身につけましょう。

コツは「クッション言葉+代替案」です。

アサーティブな断り方(会話例)

「今は手一杯でできません」と突っぱねるのではなく、
「申し訳ありません(クッション)、今は〇〇の処置中なので、30分後ならお手伝いできますが、いかがでしょうか?(代替案)」
と伝えると、角が立たずに断ることができます。

そして、もう一つ大切なのが「断った後の心のケア」です。勇気を出して断った後、相手が不機嫌になったとしても、それは相手が自分の期待通りにならなかったことへの反応であり、あなたが悪いわけではありません。

「断った後の気まずさに耐える勇気」を持ってください。相手の機嫌まであなたが責任を負う必要はないんですよ。

同僚の機嫌を取るのをやめる「課題の分離」

アドラー心理学で有名な「課題の分離」です。先輩がイライラしているのは、先輩が抱えている問題(課題)であって、あなたが解決すべき問題(課題)ではありません。

「機嫌が悪いのは私のせいかも」と考えるのをやめましょう。「先輩は今、機嫌が悪いんだな。それは先輩の問題だな」と割り切ることで、不要な罪悪感から解放されます。

もし、現場で不機嫌な同僚に遭遇して心がざわついたら、心の中でこの「魔法の呪文(マントラ)」を唱えてみてください。

心のバリアを張る呪文

「これはあの人の課題、私の課題じゃない。」
「私は私の仕事(患者さんのケア)をするだけ。」

これを唱えることで、感情的に巻き込まれそうになる自分を「おっと、境界線を超えそうだった」と引き戻すことができます。

休日はスマホ通知を切り「仕事の脳」を休ませる

休みの日に病院から電話がかかってくるかも…とビクビクしていませんか?緊急連絡網があるとはいえ、休日はあなたのものです。可能な範囲でスマホの通知をオフにしたり、物理的にスマホを別の部屋に置いたりして、「つながらない権利」を行使しましょう。

「私がいないと回らないかも…」と不安になる気持ち、分かります。でも、あえて厳しいことを言わせてください。

本当に緊急なら、何らかの形で連絡が重なることが多いです。そして、あなた一人がいなくても病院は回るようにできています」

これは冷たい事実ではなく、あなたが安心して休むための事実です。組織というのは、誰か一人が欠けても機能するように作られているんです。だから、過剰な責任感を手放して、堂々とスマホを機内モードにしちゃってください😅 あなたの代わりはいても、あなたの人生の代わりはいないのですから。

限界を超えたらプロを頼ろう。心療内科受診のハードルを下げる

カウンセリング(心のメンテナンス)、心療内科(回復の松葉杖)、産業医(組織を動かす切り札)それぞれの役割を示したアイコン図

最後に伝えたいのは、一人で抱え込まないでほしいということです。「病院に行くほどじゃない」と思っているうちに、重症化してしまうケースをたくさん見てきました。

カウンセリングは「心のメンテナンス」

心療内科やカウンセリングに行くことを「特別なこと」だと思わないでください。美容院に髪を切りに行くのと同じで、心のメンテナンスに行く感覚でいいんです。第三者に話を聞いてもらうだけで、驚くほど心が軽くなることもありますよ。

ただ、カウンセリングには「相性」があります。美容師さんにも「この人のカットは上手いけど、会話が疲れるな」とかありますよね?(笑)
それと同じで、もし一度行って「なんか合わないな」と思ったら、無理に通い続ける必要はありません。

相性が合わなくても大丈夫

「合わない」と感じるのは、あなたが悪いのでも、カウンセラーが悪いのでもなく、単なるマッチングの問題です。美容室を変えるように、別のクリニックやカウンセラーを探せばいいだけのこと。だから、「一度行ってダメだったから、もうどこに行っても無駄だ」と諦めないでくださいね。

投薬への抵抗感をなくす正しい知識

「薬を飲むと癖になるんじゃ…」「一生飲み続けなきゃいけないんじゃ…」と不安に思う人もいるかもしれません。でも、精神科の薬に対するそのイメージは、少し古いかもしれません。

適切な投薬は、枯渇した脳内の神経伝達物質を整え、休息できる状態を作ってくれる「骨折した時の松葉杖」のようなものです。

薬は「回復を助ける補助具」

骨折したら、足が治るまで松葉杖を使いますよね? 松葉杖に頼ることを「恥ずかしい」とか「一生手放せなくなる」と心配する人はいないはずです。
メンタルの薬も同じです。心が骨折して歩けない間だけ、補助具として利用し、自力で歩けるようになったら徐々に外していけばいいんです。

薬の種類によって注意点は異なります。不安がある場合は「依存性の有無」「やめ方(減らし方)」を医師に具体的に確認し、自己判断で増減・中止はしないでください。自己判断で恐れず、専門家の力を借りて、まずは「眠れる夜」と「落ち着ける時間」を取り戻しましょう。

「産業医」や「院内相談窓口」活用のメリット・デメリット

多くの病院には産業医や相談窓口が設置されていますが、「相談したことが上司にバレるんじゃ…」と不安で利用できない人も多いのではないでしょうか。

正直なところ、その不安は半分当たっています。本来は守秘義務はありますが、「職場の中で相談すること自体に抵抗を感じる人がいる」のも事実です。心配な場合は、相談時に「どこまで共有される可能性があるか」を最初に確認しておくと安心です。

メリット無料で相談できる、職場の内情を理解してもらいやすい、休職の手続きがスムーズになる場合がある
デメリット相談内容が上司に筒抜けになるリスク(本来は守秘義務があるが)、職場内なので通いにくい

ですが、これを逆手に取ることもできます。つまり、「産業医を味方につけて、組織を動かす」という戦略です。

例えば、師長に直接「異動したい」と言っても却下される場合でも、産業医から「健康上の理由で配置転換が必要」という意見書が出れば、病院側も無視できません。産業医は、単なる相談相手ではなく、あなたの身を守るための「強力なカード」として使える存在なんですよ。

看護師が長く働くために一番大切なのは「自分自身」

看護師は素晴らしい仕事ですが、あなたの健康や人生を犠牲にしてまで続けるものではありません。あなたが倒れてしまったら、元も子もないのです。

「自分を大切にするなんて、わがままじゃないか」と思うかもしれません。でも、シャンパンタワーを想像してみてください。一番上のグラス(あなた自身)が満たされて溢れ出さない限り、その下のグラス(患者さんや家族)を満たすことはできないんです。

一番上のグラス(あなた)が満たされることで、下のグラス(患者・家族・同僚)に水が流れていくシャンパンタワーのイラスト

「あなたが幸せでなければ、患者さんを幸せにすることはできない」

これは綺麗事ではなく、対人援助職の鉄則です。だからどうか、自分の心の声を無視しないで、守ってあげてくださいね。私も、訪問看護の自転車を漕ぎながら、あなたのことを全力で応援しています!

窓の外を見上げ、白衣を持って佇む看護師の後ろ姿。「あなたの優しさを、誰よりあなた自身のために」というメッセージ
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